※ご注意です※ |
以下はSPNのS×Dのパロディ小説です。 意味のわからない方、興味のない方は、 ご覧にならないようにお願い申し上げます。 ※R-18要素・ネタバレを含まみます※ |
真実の声 シーズンT『感染』より |
サムが、悪魔のウイルスに感染した。 俺としたことが、抜かった。 発症するには四時間以上の時間がかかる。ここにいる全員のウイルスチェックを、何より先にしておくべきだったのだ。 他の患者の例を見ても、感染すれば、ほぼ間違いなく狂ったように暴れだし、危害を加えるようになるだろう。それは分かる。 だが、俺には、サムを切り捨てる事なんて、考えもつかなかった。 「俺の弟に指一本でも触れてみろ!」 サムに近づこうとする曹長を全身で威嚇して止める。 信じられない、サムを殺そうとするなんて。 サムを処分しようと言い出した曹長達に声を荒げて言い切る。 絶対にサムを傷付けさせはしない。するものか。 ドウェインが僕のときは殺そうとしたくせにとかなんとか、わけのわからないことをほざいていたが、お前とサムとでは訳が違う。 感染していようといまいと、関係ない。 サムは、俺の―弟なのだから。 「最悪の選択だ・・・」 インパラのキーを投げて曹長達を逃がした後で、部屋にしっかりと鍵を掛けた。 これで、もう外からは誰も入ってこられない。 もう、誰もサムを傷付けるやつはいない。 心底安堵した。 信じられないというように、涙を流して俺を出て行かせようとするサムを、不思議なくらい冷静な気持ちで見つめる。 どうして俺を、邪魔にするんだ?お前が逝くのなら、そしてどうしてもそれを止められないのなら、それを見届けて、そうして俺もすぐに行くよ。だから寂しくなんかないんだぜ? 大丈夫、お前をひとりになんかしやしない。だから、そんなに俺を邪魔にしないでくれ。 サムのいない人生なんて、俺には何の意味もないんだから。 思えば、俺の人生は全て家族の為の物だった。 母さんを殺した悪魔を倒すため、父の狩りを助けるため、そして弟を守るため。 母さんの復讐はできなかったけれど、きっとそれでも、父さんはもう赦してくれるだろう。 だって、サムをたった一人で逝かせることなんてできやしない。 替われるものならばどんなことをしても変わってやりたい。替われないのならば、俺も、一緒に逝く。 「もう、疲れたよ…」 逃げろ、と繰り返すサムに、ぽろりと本音が漏れる。 世間には認められない狩りで肉体も精神をもすり減らす生活にも、ただそれだけを繰り返して悪魔を追いかけるしかないこの人生にも。 ―大切な弟の命を奪われるこの運命にも。 どちらにしても、もう限界は来ていたんだ。 たった一人の弟を、守ることすらできやしなかった。 嗚咽しながら涙を流す弟に、そっと近寄る。上着を脱ぎ棄て、Tシャツを捲り上げて、ベルトに手をかけると、ようやく俺の意図に気づいたのか、サムが首を緩く振った。 駄目だ、ディーン、だめ… 感染を恐れているのだろう。今更だ。 だが確かに、二人ともが感染して変化してしまったら止める者がいなくなってしまう。サムの膝に乗り上げてから、ジーンズの内ポケットから常備しているゴムを取り出してからかうように安心させると、サムは口元だけで哀しそうに笑って、もう一粒涙をこぼした。 感染しないようにすると言った手前、軽く唇を合わせることしかできず、その切なさに呻く。 ―なんてこった、最後なのに。 切なさに、思わずサムの頭を抱き抱えるようにしてしがみ付く。 最後なんだ、サム。 もう俺がお前にしてやれることなんて何一つない。 平凡な大学生活を満喫して、弁護士としての薔薇色の未来が待っていたお前を、可愛い彼女の元から泥臭い狩りへ引き戻した、悪い兄貴だったよな。 でも、俺はお前とまた一緒に旅ができて、本当は―本当に、嬉しかったんだ。 父さんが行方不明になってからの二か月、ひとりで、本当に不安だった。情報を集めながら、なんとか狩りは続けていたけれど、なにかあった時に頼れる相手がいるのといないのとでは訳が違う。 父さんは、ボスだ。YES,SER以外にいえる言葉がない。 だが、お前は同士だ。共に戦える。 背中を預け合えるのは、お前だけなんだ。 そんな思いを噛み締めながら、柔らかい口づけをなんども繰り返す。 ごめんな、最後が俺の尻なんかで。キュートで柔らかい女の子じゃなくて。代わりに、うんとヨクしてやるから。 身を捧げるような気持ちで尽くす。 元から、サムに何かしてやることは、嫌いじゃない。普段から狩りの時には俺が先頭に立って指図することが多い分、この時だけはサムが主導権を握ることで、実は向こう気の強い弟の鬱憤を発散させているような気すらしていた。 泣きじゃくるサムの上に跨って、それでも俺の愛撫に勃ち上がったモノにゴムを被せてサムの逞しいモノをなんとか受け入れて、必死に腰を振る。 サムがイイように、サムが気持ちいいようにと動くと、ソレは嬉しそうにドクドクと強く脈打った。 せめて気持ち悪くないといい、最後くらい、少しでも愉しんで逝けたらいいと、そんな気持ちで、必死に奉仕する。 サムとの最後のセックスは、恐ろしいぐらいに気持ちが良かった。 泣くばかりで腰を使おうとしないサムの、涙を唇で吸い取ってやりながらゆるゆると動く。 泣いてるくせに張り裂けんばかりに猛ったソレを必死に受け入れ動くと、何故か不思議なくらいの幸福感に包まれた。 俺の人生は、決していい事ばかりじゃなかった。 失ったものは取り戻せず、人々を助けても、感謝されるどころか石を投げられ、罵られることもあった。 それでも、なんとかやってこられたのは、親父の気持ちが良くわかったからと、それから― サムが。サムが、いつも側にいたからだった。 我儘で甘ったれで、いつも俺の後ろをついてきたくせに、大きくなったら俺達を切り捨てた、それでも。嫌いになんてなれなくて、心配で。 調べ物が好きで、頭がよくて、びっくりするほど大きくなってしまった、大好きな俺の弟。 サムを失って、一人で戦い続ける地獄よりも。このままサムと死ねるならこれ以上の終わりはない。そんな気がした。 狂ったような思考の中で、動物みたいに荒い息を繰り返す俺を、いつの間にか泣きやんだサムが見つめている。 こんな恐ろしく馬鹿馬鹿しい事を俺が考えているなんて、サムは思いも寄らないのだろう。自分の犠牲になるなんて、と罪悪感に苛まれている。 俺は、こんなにもしあわせなのに。 突然、全てが夢の中の出来事のような気がして、ふっと弟に微笑い掛けると、サムがゆっくりと近付いてくる。 合わせた接吻は毒のように甘く、死を覚悟した弟との交合に、蕩けるほどの快感を感じて。 俺はゆっくりと目を閉じた。 【END】 -------------------------------- オフ本にはサム編&ディーン編、という感じで続けてUPしてあります。プレビューにはディーン編だけ全部載せました。 |