ライトの作品が廃墟だった頃
かつての旧山邑邸(ヨドコウ迎賓館)跡1978年
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修復後の現在の旧山邑邸
まだ世話人が建築学科の学生だった頃、旧山邑邸が廃墟化しているのを聞きつけて
友人と探索にでかけた。1978年の正月のことだ。

旧山邑邸は、日本で建築されたF.L.ライト設計の住宅の中で、建築当初の姿を
そのまま保っているただ一つの作品だ。そして大正年間ライトが帝国ホテル建設の目的で
来日したとき設計した建物は12件(内6件は住宅)あるが、
一部明治村に移築されたものを除けば現存するのは自由学園の明日館この建物だけだ。

このような建築史的意義を評価され、大正期の建造物として、また鉄筋コンクリート造りの
建造物として、初の重要文化財の指定を受けたのは、1974年5月のことだ。
にもかかわらず世話人が訪れた(まぁ不法侵入だが…)4年後の1978年はもう完全に
廃墟状態だった。重要文化財の指定を受けてもこの状態だ。

指定すればいいというものでもないだろう。廃墟趣味の世話人にとってはヘンに
復元されるよりは廃墟状態のほうがイイが、保存すべきものは当然保存すべきだ。
しかし、建築以来既に半世紀以上の歳月がたち、雨漏りや基盤の部分的沈下などに伴う
破損が著しく、また彫刻された飾り石の欠落、生活上の必要から、
後に加えられた部分的変更等も認められていた。
(住む人にとってはライトの作品がどうのこうのは関係ないのだ)

そこで、1985年から1988年にかけて、淀川製鋼所が保存修理の事業者になり
、国・兵庫県・芦屋市からの補助を合わせて抜本的な修理を施した。

震災のあとも再度補修され(難工事だったらしい)
現在は山邑家住宅(ヨドコウ迎賓館)として一般公開され見学が可能だ。
開館日 水・土・日曜日と祝日 阪急芦屋川駅から北へ徒歩5分

  
荒れ放題の屋上テラスと世話人(1978年)    修復後の現在の屋上テラス

  1978年探索の時の写真

 
、   
セピア色の廃墟世界だ          玄関廻り、荒れていても美しかった

    
屋上のペントハウス       4階の食堂(天井の仕上げが剥げ落ちていた)


  
荒らされたままの2階応接室        家具も置かれ、修復後の応接室