マジックガーデンを検証する 

つぐまるのハモニカ横丁に戻る

製品仕様

商品名:マジックガーデン(Magic Garden)
音域:14穴 56音 g〜d4
機種:スライド式クロマチックハーモニカ
材質:樹脂ボディ
寸法:175×45×30mm 重量:270g
製造:鈴木楽器製作所
価格:40,425円(税込み)

探せば実勢価格として2割引き程度で
購入可能というところでしょうか。



購入とその検証に至る背景
クロマチックハーモニカといえば一般的にはホーナー社の製品だ。
この点についてそんなに異論のある人はいないと思う。なんといっても老舗だ。クロマチックハーモニカの歴史といってもいい。
だけどクロマチックに関しては他社もどっかホーナーに遠慮しているような気がする。
技術的にはホーナーを超えるものが創れるのになんか黙っているような感じだ。気のせいだろうか・・・?

そんな中、日本のメーカーからちょっと雰囲気の違う製品が出ている。
マジックガーデンという名のスズキ楽器とフランスのハーモニカ奏者クロード・ガーデンとのコラボレーションで
開発されたクロマチックハーモニカだ。
だからマジックガーデンというネーミングだと思う。ちょっと短絡的だが・・・
どんな風にコラボレートされたのかはよくわからないが、クロード・ガーデンはクラシックからジャズまでこなす
技巧派のクロマチック奏者だ。そしてプロにしては珍しくホーナー社のCX−12を使用している。
1999年発行のハーモニカレビュー35号のインタビュー記事でも
CX−12を高く評価していて、CX−12は21世紀のハーモニカだとまで言っている。
 愛機CX−12
CX−12愛用者の世話人としては大変心強いお言葉であります。そんなクロード・ガーデンがコラボレートする以上、
CX−12の流れをくんでいないわけがない。そして現在のCX−12の欠点をクリヤーした製品に違いない・・・
・・・と勝手に異常な期待をもって購入した。

というわけで、期待どおりだったのか?ハズレたのか?CX−12との比較を意識して検証したいと思います。







まずケース

木箱だ!!木箱に入っていると確かにアリガタイ気はする。
世にあるクロマチックハーモニカで木箱に入っているのは、私の知っている限りでは
Poleという受注生産の最高級ハーモニカとコレぐらいだとと思うけど、
他にもあるのかな?あるような気もする・・?
もっともこのマジックガーデンの中身の価格はPoleの30分の1ぐらい
だと思う・・・Poleのほうがよくわからないけど・・・
これぐらいのハーモニカでワザワザ木箱にすることもないとは思うのだが、
そこはスズキの心意気というところでありましょうか?
それにしても丁寧なつくりだ。
コーナーもキレイに面を取ってあってツルツルしている。
継ぎ手の細工も手を抜いていない。装飾があれば工芸品に近い出来だ。
箱だけでも他のものに立派に使えそうだ。
しかし、これに注ぎ込んだコストを本体の方に廻した方がもっとイイものが
出来るのではないか?とちょっと意地悪く考えてみたりもする。

大体、ハーモニカのケースというのはもっと小さくてもイイような気がしている。
私の愛用のCX−12なんかメチャメチャでかくてかさ張ることこの上ない!
定番のスーパークロモニカ270あたりは本体の体積を1とすると
ケースの体積は3,5倍だが、CX−12は約4,1倍と差がある!
この差の意味がわからない。
へリングのベルベットボイスは頑張って2倍弱程度に収めている。さすがブラジルや!
ちなみにスーパー64とCX−12のケースの大きさは全く同じだ。
体積比はスーパー64は3,9倍だから1オクターブも差があるのに
本体の大きさはCX−12とあまり変わらないようだ。
もともとCX−12はデカイということか・・・?
肝心のマジックガーデンは約4,6倍だから、これが木箱でなかったら
許せないところであった!

・・・と!まったくどうでもいい比較でありました・・・

従って、最新の物以外は百円均一で買ったソフトケースにほうり込んで、
もともとのケースは捨ててしまっている。
(もっと楽器を大事にしろとお叱りの声もあるかもしれないけど、あまり家の中に
ハーモニカのケースがゴロゴロしているのは肩身の狭いものなのだ・・・)
というわけでこのマジックガーデンも百均のソフトケース入りになってしまう運命だろう。
ケースの話が異常に長くなってしまった。



持った感じ
マジックガーデンはエッジをすべて丸くしてある。角が当たらないから手も痛くない。確かに持ちやすい。ただちょっと重たい気がする。
CX−12、その他と重量比較すると(概略の実数量による)
マジックガーデン 256g(スペックでは270g) 1,42g/cm3 
CX−12 190g 0、89g/cm3
ハードバッパー 196g 1,25g/cm3
スーパー64 260g 1,23g/cm3
ベルベットボイス 226g 1,58g/cm3

CX−12とは、半オクターブの差を割り引いてもやっぱり重い。特にマジックガーデンの本体が薄い分、重く感じる。
ただCX−12自体が軽すぎるので他のクロマチックからの持ち替えだったら違和感はないと思う。

以前、シルバーコンチェルトを持たせてもらったらメチャクチャ重かった。
(自分には演奏出来ないと思った。それより前に買えない・・・)



この色使いは賛否両論か?

本体とカバープレート
本体は樹脂製でなんと明るいムラサキ色だ。そしてカバープレートはスチールに黒の焼付塗装だ。
黒のカバープレートといえばCX−12を除けばスーパー64Xぐらいか・・・。64Xは艶消しだが、マジックガーデンは艶がある。

Magic Gardenというロゴも結構ハデだ。
裏面はクロード・ガーデン(多分・・)のサイン入りだ。


本体の背面(よくメーカー名が書いてあるところ)と側面は明るいムラサキ色だ。
黒が基調でマウスピースその他のラインが金色、そしてムラサキと・・ゴージャスや!
これがフレンチスタイルというのでありましょうか?
だけど何故かリードプレートが剥き出しだ。これが亜鉛メッキの生地色のままだ。なんかチグハグというか、試作品ぽいというか、
純金メッキの隣がいきなりコレか?みたいな・・・ちょっとこのセンスは理解出来ない。
まぁ〜こういったところはあくまでも好みの問題だから大きなお世話でしょうが、正直に言うと趣味ではない!
購入の際にもこの色使いに随分と躊躇した。
個人的にはメタルカラーのシンプルなデザインのハーモニカが好みだ。コテコテしたものはどうも・・・・なぁ
確かにハーモニカは音が大事なんだろうけど観賞用として楽しめる部分もないわけではないので無視も出来ない。

カバープレート自体もちょっと薄いような印象を受けた。何かペンペンという感じだ。高級感に欠ける。
念のため厚みを調べてみた。あくまでも実測だが・・・

まぁ普通だろうと思ったメロートーン・・・0,5mm
きっと厚いだろうと思ったスーパー64・・・0,5mm
薄いに違いないと思ったベルベットボイス・・・0,5mm
そして、多分薄いだろうと思ったマジックガーデン・・・0,5mm
という結果になり、まったくの思い過ごしでありました。みんな同じだったんだね・・・




マウスピースの部分

マウスピースは丸穴でカマボコ型というかアーチ状だ。その上純金メッキを施してある。見た目もスベリが良さそうだ。
実際、口に当ててみてもツルツルして感じがイイ!
角穴、台形型マウスピースだと口が痛いので(そんな人は結構いると思う・・)このタイプのような製品を期待していた。
そしてこの部分がCX−12の流れをくんでいるのではないかと思われるところである。
しかし、CX−12よりはずいぶんと厚みがない。概ね4分の3ぐらいだ。
このCX−12のマウスピースの厚いところが良いという人もなかにはいるのだろうけど、殆んどの人はこの厚さに難儀しているのでは
なかろうか?(世話人もその一人でコレを愛用している間は、タングブロックや重音の類の練習はあきらめている。)
マジックガーデンはCX−12と異なりカバーを一体成型にしなかったことでこの薄さが確保できたようだ。

ところが、薄ければ吹きやすいかと云えばそうでもない。まだ慣れないせいもあるのかもしれないけれど、
このマジックガーデンは吹いていて何故か唇が疲れる。確かにアーチ型だと突起物がないのでスベリが良い。
それは横方向だけでなく前後方向にもスベリが良くなってしまうということだ。
そして、前後方向にもスベリが良くなってしまうということは、裏を返すと唇の位置が安定しにくいということでもある。
CX−12ぐらい厚いとマウスピースをくわえるというよりは当てるという感じだが、
なまじ薄いとどうしても息もれを防ぐため、くわえるという動作が必要になる。
これが丸くて滑ると当然くわえにくいから余計な力が入って疲れるということになるのではないか?

今までのハーモニカのマウスピースが安易にアーチ型になっていない理由を見たような気がした。



*左:マジックガーデン 右:CX−12



ちなみにマジックガーデンは所謂千鳥式の配列だ。
系統としてはCX−12やスーパー64の仲間だ。


スライドレバー
CX−12のスライドレバーの反動装置はスプリングだ。他のクロマチックは一般的にバネだ。これがよく折れる。
折れる人はコレまたよく折れる。その点ではスプリングは心配ない。
しかし、CX−12は、使い込むうちにやたらスライドレバーのノイズが大きくなってくる。
これは本体、カバーとも樹脂で出来ているためスライドレバーとの摩擦で樹脂部分が磨耗してくるのと、
分解組み立てを繰り返しているうちに嵌合部の密着が甘くなるのではないかと思う。
これだからCX−12はダメやという意見もある。確かにそのとおりだ。一流の人たちは、スライドレバーを最小限のプッシュで
♯を維持するからさほど気にならないかもしれない。
だけど、世話人のにように早い曲であせってくるとスライドレバーから指が離れ、
ムダな動きをするという悪癖がある人にとっては致命的だ。カチャカチャいわせながら演奏している。

マジックガーデンは、この部分について機構的には他のクロマチックと同じだ。タッチはスーパー64あたりに似ている。
バネの心配以外は問題なさそうだ。



音域
これは3オクターブ半の音域だ。基本的には3オクターブの音域でそんなに不自由はないのだけど、
たまに吹きたい曲で途中に低音のBなんか出てくるともうそこで終わりだ。
1オクターブ上げて吹くと今度は高音がだせなくなったりする。たった1音のために移調して譜面を書き換えるのも面倒くさい。
4オクターブのものを常用すれば解決する問題だけど、4オクターブは大きいし、重いし、
低音部はブゥーてな音であまり使わないからやっぱり余計だ。3オクターブ半ぐらいがちょうどイイのだけど、
3オクターブ半のバリエーションはどこもあまり充実していないようだ。CX−12の3オクターブ半があればという声も
あるようだけれど、ホーナーの顧客ニーズに対するレスポンスはあまりよくないようだから、すぐには期待出来そうもない。
そんな按配でこれぐらいのクラスの3オクターブ半の登場は、ありがたいと思った。



で!音はどうなのだ?
スーパークロモニカ270のように木製ボディのハーモニカは一般的に音に味わいがあるとか
深みがあるとか、いわゆるハーモニカらしい音がすると云われているようだ。

そしてその対極にあるのがCX−12みたいなカバーも含めてオール樹脂製のタイプだ。
音も淡白というか無機的というか笛みたいというか何と云うか?ソプラノサックスなんかに近いものがある。
悪く云えば鍵盤ハーモニカか・・・?あくまでも個人的感想だけど、自分で吹いていてもそう思う。
CX−12はジャズ、ボサノバ向きよ !と云われている所以だ。

このマジックガーデンは、スーパークロモニカ270などの正統派の流れをくんでいるような印象を受けた。
どちらかといえばクラシック向けという感じか・・・?樹脂ボディだけど木製ボディの音に近いイメージだ。
そして遠くの方に複音ハーモニカの香りもする・・・気のせいか?
これはCX−12の流れをくんでいるどころか、CX−12の対極にある音づくりをしているようだ。
CX−12のテイストすら入っていない。

以外であった。愕然とした。根底から覆された按配だ。別に音が悪いとか気に入らないという意味ではありませんが・・・



一応、総括してみる・・・
人それぞれだとは思いますが、新しい機種のハーモニカを購入して始めて吹くときに、吹き込んだ息に対する音量や、どのくらいのズレで
出てくるかみたいなレスポンスはもちろん、その音色なども予めイメージして吹き込むのではないでしょうか?
そしてイメージどおりだったらシメタと思うし、ハズレたらアチャーとなって
ほとんど吹かないハーモニカがまた1個、家の中にころがる事になったりしないでしょうか?
ハーモニカ自体同じ機種でも個体差(所謂当たり外れ・・)が結構ある。まして機種が違えばなおさらだ。

今回のマジックガーデンはどうかというと、思いっきりハズしてしまった。
これほどイメージからズレたものも今までなかった。これは別にマジックガーデンが悪いという意味ではない。
勝手な先入観や思い込みで購入したほうが悪い。
冒頭に書いたように、マジックガーデンがCX−12のスズキバージョンであろうと推測したところから失敗は始まった。
そういった切り口でみるとマジックガーデンとCX−12は一部分を除いてまったく似ても似つかぬものであると思う。
CX−12吹きとしては落胆するのは否めない。

だけどマジックガーデンはよく研究されて製作された良いハーモニカに違いない。
スライドレバーのアクションがちょっと安っぽい感じがしたのはちょっと気にはなったが・・・
音量も結構出るほうだし、外観など個性的スタイルな割には音質自体は奇をてらっていないというかオーソドックスだと思う。
分解してみて判ったのは、一つ一つのパーツが予想以上に丁寧に作られていることだ。
このハーモニカがしっくりこないのは、やはり自分に問題があるのかもしれない。

CX−12吹きの宿命かもしれないけど、もうCX−12吹きしか吹けない体になってしまったのかも・・・

まっさらな気持ちで先入観なしで吹いたら全く別の評価になったかもしれない。世話人程度ではなく、
上級者が評価した場合でもまた然りだ。

というわけで、個人的には結構ショックが大きくて何が何だかわからない検証となってしまいました。

とりあえず分解写真を掲載しますのでご参考にして下さい。



マウスピース部をはずす

カバーをはずす


リードプレートには日付が
打ってある。
なんと注文して入金したその日の日付だ!

偶然だろうけどスゴイ!


カバープレートの補強バー・・取り外せる


ディテールはとっても丁寧だ。

スライドバーの反動はバネだ。