ニッポンの廃墟本の紹介(その3) 
つぐまるの廃墟アワーにもどる

ニッポンの廃墟本(その3) 2004.3


前々回(2002.06)、前回(2003.08)とニッポンの廃墟本を紹介してきたが相変わらず廃墟ブームは続いているようだ。
しかし、廃墟なんて次から次へと生産されたり、新バージョンが登場という類のものでは、もちろんない。
どうしても時間の経過というものが必要だ。

そういったことで、現存している廃墟については、紹介されつくしたり、論じられつくされた感は否めない。
廃墟本もどんどんと刊行されてはいるが、さすがに焼き直しの似たりよったりものも増えてきて、
廃墟本収集家の世話人としてもそろそろ選別の時期に入ってきている。
今回は、数は少ないけれど、そんな中でもまだまだ健闘しているなという感じの物を紹介してみた。



いままで紹介したものと概ね似たような作品(別に出来が良い悪いとかという評価ではない。)

1.廃墟探訪        中田 薫 関根虎洸 中筋 純 (著)(2002/10) 二見書房
               雑誌「GON!」で好評連載を博した「廃墟ドキュメント」を単行本化したもの。

2.墟             PRIDE(著) (2003/05) ぶんか社    
               よく他でも紹介されている鉱山跡や巨大ホテル跡など、怪しげな廃墟写真が満載。

3.廃墟ノスタルジア  三五 繭夢, 栗原 亨 (著) (2003/11) 二見書房 
                 廃墟フォトエッセイ。女性写真家の作品などなど。

4.廃墟の歩き方 (2)   栗原 亨 (著) (2003/11) イースト・プレス
                「廃墟の歩き方・探索篇」の続編で、これは「潜入篇」として、
           関東地方の廃墟を紹介している。


一般書籍・写真集編

 表紙                   内容とコメント                 ・

NO MAN’S LAND 軍艦島   Japanese deathtopia series 著:小林 伸一郎 発行:講談社                                       2004年1月

廃墟写真家、小林 伸一郎氏の新作。炭鉱閉山から30年、軍艦島の廃墟としての写真集は
数あれど、これは「月の光」とならび美しい軍艦島写真集の筆頭にある。
割と穏やかな写真が多いが、波に洗われて杭や基礎が剥き出しになった建物の写真は圧巻!

日本の戦跡を見る 安島太佳由写真集    著:安島 太佳由 発行:岩波書店 2003年12月

『戦争遺跡から学ぶ』の姉妹編ともいえる。著者の安島太佳由氏は戦跡関係の
第一人者といえる。 
日本戦跡、戦跡を歩くに続く作品だが、内容は焼き直しではなく新鮮だ。

巨幹残栄    忘れられた日本の廃鉱  写真、著:萩原義弘 発行:窓社 2004年1月

全国に散在する石炭、銅、亜鉛鉱山などの廃鉱跡20余年の歳月をかけて撮りつづけてきた
著者の労作。
どこか懐かしい風景のオンパレードだ。原風景満載だ。炭鉱等と無縁な人もそう感じるかも・・

残像 筑豊1986−1993       写真・著:石川 耕二 1993年5月

これも炭鉱や炭住の写真集だ。人の住まいを取り上げて廃墟というのは失礼な話であるとは
思うが、やはり朽ち果てていく風景というのは、心にしみる。
原風景満載という点では上で紹介した「巨幹残栄」を上回る。
世話人は幼少期を北九州で過ごしたので、ノスタルジアとしてすり込まれているようだ。

廃墟論   著:クリストファー・ウッドワード 森夏樹/[訳]  発行:青土社 2004年1月

これは日本の廃墟本ではない。別の欄で紹介すべきものではあるが、正面きって廃墟論と
ブチあげたところに敬意を表して紹介した。
廃墟が人の想像力にもたらすものについてというのが根底にはあるが、
幅広い切り口で廃墟を論じている。
著者は英国の美術館ディレクターだからなのか、廃墟と芸術性は切りはなせないようだ。
廃墟は危うくて、生臭い部分もいっぱいあるが、こうやって論じられると
格調高いものに見えてくる。

「サライ」 2003年12/18号 特集・今も現役「産業遺産」の街を歩く   小学館

昔のサライは老若男女楽しめる企画で世話人も愛読していた。
最近は随分とセレブな雑誌になっちゃって、あまり手にとる事もなくなったが、
今回の特集は割と品のイイ産業遺産等を取り上げている。


D V D編 

カバー                内容とコメント                 ・

The Lost Treasure廃墟シネマ    瀬々敬久(監);篠原涼子(演)ホリプロ
(ポニーキャニオン) 2003/12
収録時間:53min.

映像作家・瀬々敬久監督が、休日は、廃墟探しに没頭するサラリーマン。
廃墟の魅力にとりつかれたカメラマン。廃墟で映画を撮ることを夢見る女子高生
などなど・・・色々なタイプの廃墟に魅了された人々を捉えたドキュメンタリー。
女優・篠原涼子出演の16mm短編作品も見所。

The Lost Treasure 同潤会アパート  瀬々敬久(監)深田恭子(演)ホリプロ
(ポニーキャニオン) 2003/12収録時間:53min.

同潤会アパートの取り壊しにあたり、住人、 取り壊しを惜しむ人たち、
再開発側からの切り口を通して、同潤会アパートを検証していくドキュメンタリー作品。
やはり解体寸前の同潤会アパートは美しい。
そして、あのフカキョンが出演しているのが何ともイイ・・

2003年6月26日BSフジで放送されたもののDVD版。