サヨナラ


あなたを生かすことが
わたしの中の何かを生かす
あなたを死なせることが
わたしの中の何かを滅ぼす

祭りの夜
饐えた匂いの漂う路地を
綿アメを抱いた子供たちが
何処か寂しげにすれ違う

場末の食堂の隅
うつむいて箸を取ると
不意に佇む影
見上げると
死んだ男が微笑んでいた

・・・相変ズジャナイカ
   暗イ顔デ飯ナンカ食ッテサ

・・・おまえも変わらないよ
   死人は年をとらないからな

・・・死ンダ人間モ
   永遠ナンカジャナイヨ

死なせはしない
たとえ心音が聞こえなくても
ひそかな呼吸が途絶えても
けっしてあなたを死なせはしない

失いはしない
わたしが失うために
あなたは苦しんだわけじゃない
光に目を細めたわけじゃない

・・・死なせはしない
   あなたが逝くならば
   ぼくも滅ぶだろう

・・・アナタハ滅ンダリシナイワ
   タダ少シ
   夜ガ深クナルダケ

あなたを生かすことが
わたしの中の何かを生かす
あなたを死なせることが
わたしの中の何かを滅ぼす

死なせはしない

・・・サヨナラ

けっして死なせはしない!

・・・サヨナラ!