審判


 夏の午後、大気は静止して、すべてを──建築も木々も空を見上げる男の顔も──確かな光によって現存させる。

 ミセスM。彼女の秘部は濡れていない。彼女の乳首は母乳を分泌している。乳母車──薄明るい倉庫の、猫の死骸や散乱した生ごみのなかに置き忘れられた箱舟。

 「わたしは完全な幸福のなかにいます。わたしが有罪なのか無罪なのか、決定権は”あなた”にあります。おそらくそれは、あなたではない。しかし”あなた”と呼ぶことしかできないのです。」

 「君は自分が何をしているのかわかっているのか?」明け方の夢の中の低い声。「君は破滅するだろう。この老人を訪れるがいい。彼は君を救うことができるかもしれない。」茶色い写真に写った軍服の男。その襟元はほころびている。彼は高い声で笑った。枯木のような細い人影に首を絞められながら。「それは、こういうことだろう。彼の権威とは”ここ”にいないことだけだ。彼は何者でもない。わたしが扉を開いた時、薄暗い部屋には死臭が漂っている・・・」

 「ミセスMへ。純白の寝台に横たわったあなたのために、ひとつの贈り物をしましょう。青い海、崖の上に佇む若い母。そんな小さな写真です。彼女が生きようとして佇んでいるのか、墜落するために佇んでいるのか、わたしにはわかりません。」

 夕暮れ、遊ぶ少女が大きく口を開けて笑う。咽喉の奥の暗闇まで見える。・・・男は乳母車を押しながら古い工場の前を通っていった。赤みを帯びた窓のなかには皺に包まれた目がある。その目は澄んでいる。その目は地平線を見ている。その向こうには──

 星の、ざわめく夜。