友愛


光に映える白い紙片に
「友愛」と記す指先
古いインクの匂い
扉の隙間から
差し出された手に
紙片を渡す
光にはもう
春が住みついていますね
お元気で
「ありがとう」
その低いかすれ声を
目を細めてかみ締めた
さよなら
その言葉はもう
届くことはないだろう
遅れがちな時計が
壁で時を刻んでいる
何もかも今は
静かだ