夜のはじまり


透き通る道の底に
大樹が枝をひろげる

太陽の
無数の黒点
炎熱のさなかに
氷の風が吹く

微かにふるえる硝子の人形
遠く傾く神の蒼穹

不意に
未生の獣が
叫び声をあげる
すでに夜が
はじまっていた

地表を覆う緑の液体
顔のある無数の花々

ひとつの棺が
暗い川岸に流れ着く
瞳孔の開ききった
長い髪の女
その唇から
声がのぼりたつ

「傾いてしまった墓標、
刻み込まれたあなたの名のために」