花々


振り向いた窓硝子に映るのは
わたしではなく青い花々
その一片一片に滴を抱いて
かすかに息づいている

西から東へ流れる雲が
動かない高層の雲と重なり
わずかな切れ目に
透明な時をあつめる

荒れた農地の端から
森にまで伸びる白く乾いた道
花々の輪郭はすこしずつ薄れ
浮遊する青にわたしを誘う

空に続く丘のような
やわらかな青の起伏
わたしはひとつの影のように
歩んでいった

その時、幸福は
かなえられた夢ではなかった
幾層にもわかれた時のなかで
わたしの影は傷口のように薄れる