神様の死


夕の最後の輝きのなか
国道を走る救急車
激しいサイレンの音に
ふりかえる人々の顔は
不思議に静かだった

誰もいなくなった放課後の教室
一人の少年が
窓辺に佇んでいた
ポプラのあいだを
救急車が遠ざかったあと
そっと目を閉じる
背後に人の気配
青白い少女が
つぶらな瞳をひらいている

・・・神様が死んだのよ、
知ってるの?
・・・知らない
・・・明日のお日様
顔を出すのかしら?
花はまた咲くのかしら?
・・・知らない
先生にしかられるから
もう帰ったほうがいいよ

残照のなかで
仄かに闇を含んだ木の下を
ちいさな影がひとつ、
通り過ぎる
サイレンの音はもう聞こえない
町はやがて漆黒に包まれる
ひとつの灯りもない
無限に沈黙した世界
その不思議なやさしさに抱かれて
少年はひっそりと目を閉じる

・・・明日のお日様
顔を出すのかしら?