雨の夜に


ひそかに六月の雨が降る
路上に散った花びらは濡れ
ぼくは傘をさして歩いていった

がらんとしたマーケット
緑のTシャツの女の子が
買い物かごをぶらさげている
時に彼女と目が合い
何故か思わずそらしてしまう

見知らぬ明日を思いながら
花の散る路上を帰る
空き地の向こうには白いアパート
そこにはあの娘がいて
いま何をしているのかわからない

傘の下に暖かく息づく胸
レースのカーテンの向こうから
彼女がこちらを見ていないだろうか?
ひそかに雨が降り続けて
確かに何かが育まれている

それが
死の苦しみだとは
思いもしなかったあの夜