幸福


降りしきる光のなかに
彼は目を閉じる
雪の丘に埋もれた
鳥の叫びも届かないまま
火時計だけが
硝子越しに揺らいでいる
明るい階段に水晶が転がり
誰もいない部屋を覗いた彼は
心臓を貫く喜びにふるえた

透明な腕のなかに紫の斑点が浮かぶ
死角から飛び去る鳥影
(何のためにと言う前に
 すでにそこにいたのが、君だった)
誰もいない部屋から
白熱する交差点へ
軌跡の燃える痕跡
もう振り返ることのない
ひとつの顔
その見えない微笑に包まれながら
彼は風よりも遠く
透き通っていった