夜明け


澄みきった水の向こう
黒い林の間を
丘陵に続く白い道
そこに誰かが歌っている
遠い地平には
街の灯りが瞬いていて

古びたひとつの街灯
今は灯ることもなく
薄闇に黒く佇んでいる
あの歳月
東の丘陵の向こうには
誰も住まない村が朽ちていた

・・・帰ってきた
うなだれて眠る柳の下、
待つものがあるかのように
この白く乾いた道を
誰かがまだ歌っている
わたしの住んでいた
長い沈黙の歳月を終わらせるように

灰緑色の地平の向こう
瞬きつづける街の灯り
それはやがて
歌声に導かれるように
丘陵のほうに流れはじめる
彼女と見渡したあの村へと

ああ
この街灯の下で
わたしの歌が誰かの歌に
誰かの歌がわたしの歌になる
そのなかで彼女が歌う
古い神のようにひそやかに

丘陵に続く白い道が
仄かに明るみはじめる
澄みきった水の上に
空が揺れ動き
一瞬、何もかもが沈黙する
もうすぐ
もうすぐ昇る陽のために