夜の窓を濡らす雨が呼ぶ
雨に塗れたアスファルトが呼ぶ
漆黒の底に吊り下がった黒いコートが重くなる
あなたが呼ぶ
わたしが呻く

ひとつの灯りをとりまいて
顔のない影たちが揺れる
乾いた部屋 わたしの腕が枯れ落ちる
唇の端からにじむ血

あなたが去ってから
世界は終わりのない沈黙のざわめき
あなたの涙にわたしが曇る
そんな未来は断たれたまま
一条の流れの向こうに
青白い時針が凍り付いている

あなたの後姿が浮かぶ
わたしの不眠 動かない水面に
細いその影は世界よりも孤独
そんなに寒い道に佇んで
どんな祈りが
生まれるというのかしら?

うつむくだけの午前
あなたは隅々にまで光に満ちた空に
わたしの苦しみと翳を解き放つ
そしてこんな夜
あなたは彼方から降る影の雨
咽喉の奥深くまで濡らしつくす

・・・雨
灰色の部屋は激しく歪んで
一条の傷からうごめく虫は
あても知らずに這い進もうとする

それでも、やがて
雨を見つめる子供の前で
母親が不意にカーテンを引くように
終わりの時が来るのでしょうか
あなたよりも孤独に
あなたと同じように
何も知らずに