遡行


源に
いや、もっと遠くに
その言葉よりも
新陳代謝を繰り返す
その少し饐えた匂いよりも
遠くに

観念であることを
確認するために
観念にしなければならないほど
わたしを侵食していることを
隠し通すために

取り壊される古い家
そのめくられた床下に
原色の痕跡を鮮やかにするかのように
色あせた表紙
午前の透明な光のなかで
触れた指先に
重なり合った気配
浮かび上がる白い道には
鬼百合の花々が揺れる

遡行
それ自身を明らかにするためには
痕跡をつくりださなければならないほどの
遡行だった
それが忘却の似姿であることに
不意に気づいたとき
ためいきのような気配が
自ら倒れていった
嘘だ、と
叫ぶ間もなく