水鳥


揺れざわめく森が
不意に静まり
夕映えのなかに
澄みきった沼
笹の葉群れから
見つめる水鳥

不安から
死の誘惑に
転調する沈黙
わたしは
ひともとの枯れ木を見上げる
その枝先に
凍りつく蒼穹

冷気をふるわせる
水の音
青磁を湛えた沼を
一羽の水鳥が泳ぐ
灰色の羽に
いくつかの面影を抱いて

水面を離れ
飛び去る水鳥
追うわたしの目のなかに
夜の波紋がひろがる

光の痕跡を探し求める
無数の叫びのように