生誕


きみは
肉体も心も持たない
ないきみの肌触り
ないきみの喜びや痛み
ただ目覚めている
そこに
ぼくにはわかった
わかっていた
きみもぼくも
あの夜に奪いつくされて
ないままに唇を重ねる定めを
ないきみの蒼穹
ない潮騒
ない小船
しかし
沈黙がひとつの叫びになる夜明け
霧に抱かれながらぼくは見る
涙もなく
盲いた目をひらき
きみの生誕を