再生


すべてを失うことなど
はたしてあるのだろうか
闇に沈むたびに
もう一度すべてを賭けて
生きようと叫んできた

往来する人々のなかを
うつむいて歩きながら
その彼方に水の音を聞いた
古い岩の間を
夜から来た水が流れ
多くの微笑む顔を濡らしていた
それは
わたしが失ってきたものなのか
失うほどに愛したものなのだろうか

冷たい石の歩廊に
灰色の霧が流れ
手をつないだ
ふたりの幼女が遠ざかる
わたしは、いったい
何を失くしたのだろうか
再びはじめるという物語は
何処で水音を響かせているのか

夜明けの微光に浮かぶ鏡に
色あせて白く映った顔を
見知らぬ同伴者のように
わたしは見つめた