真昼


白く光る地平の上に
塔のようなものが浮かぶ
熱さもなく冷たさもない
誰かが折り重なる気配
ぼくが
ぼくに
重なっていただけなのに
残り香のように
ピアノの音が聞こえる

昭和の最後の年から
にぎわう街を半身で見つめ
コリアタウンの路地で
もう半身を開いた時
すでにただれていた顔に
蔑みのまなざししか向けられない
おまえは誰だ
日本人か
「差別される人間は
同じくらい
差別する人間だ」
その作家の声を
快楽に似た
絶望のなかで
君は聞いた

ところどころに
空白のある系図
ワールドカップの
高揚のなかの祖国
君は
隣のベットで
テレビの声だけを
聞いた

すべてが
白い真昼
君は
君の骨の上で眠った
ぼくは
ぼくの骨の上で眠ろう