花の通る道


関係のない第三者に
くるしい恋を
繰り返し語ることは
あきらめられない自分を
繰り返し確認するためなのだろうか

夏から秋へ
焦燥だけがすこしずつ高まり
その時は近づいている
十年経てば
忘れられる
そう言いながら
彼女は
ほんとうに愛されていたのか
それだけを知りたい
第三者どころか
当事者同士でも
確証できない
そのことを

花の咲く道ではなく
花の通る道
少し前を歩く男を
彼女はぼんやりと眺め
絶対でも何でもない
男の小さな癖を思い出す
もう秋だね
そんな言葉のかたちに
口だけが動く
宙に浮かんだ沈黙を
別の言葉に置き換えることも
できないまま