その場所


秋の朝の光
すべてに浸透するような
この光のなかに
川沿いの裸木は静まり
浅水の底の砂利石が
紋様を映している

子猫を包んだ袋が
川面を
ゆっくりと流れていく
すぐ先で川は曲がり
やがて見えなくなる
幼年の七夕飾りも
きらめきながら
あそこへ消えていった

その小さな境界に
背を向けて
もやの残る空の下
山の鮮やかな紅葉を見つめても
まなざしは
そこに残ったままだ
いつかわたしも
見えなくなる場所
或いはすでに一部分が
曲がっていったのかもしれない

澄んだ瞳を開く
子猫のまなざしの空洞を
秋の光が満たして
やがて
あふれ落ちる
その気配だけが
聞こえる