鉛を孕んだ遠い空
葬儀に向かう老婆
崖下の石の道を通ると
低い笑い声が聞こえる



午前の透明な光
白く乾いた道をのろのろとバスが走る
赤と黄の花が戯れる野原から
なつかしい蝋のにおいが風に運ばれる



青すぎる海を飛び去る白い鳥
そのやわらかな羽に埋もれ
丘の上の古い校舎を思い出す
いつも迷路だった白樺並木の道も



黄色い粒子の舞う夕暮れの道
信号の前を通り過ぎる列車
黒い帽子を被った男は
赤い花を胸飾りに向こうに佇む



こわれた窓に翡翠いろの瞳
闇のなかに無数の肩がひしめきあう
裏口から逃げ出す背中の月形の傷が
森に続く黒い道を遠ざかる



夜明けの稜線は薄い薔薇いろ
川に続く小道をふりかえると
血を流す獣が倒れ臥し
冷気に縁取られたまぶたを震わせている