いつかの


いつかの空
半音ずつ下降する青
そのなかで
花が水を吸う
かすかな息遣いを聴いた

道は白く乾く
手をつないだ母娘のかたちに
白樺の樹と
百合の花
何もない倉庫で
陽光に口を開ける猫

昭和30年代の古い看板
その色あせた文字を
たどる指先に
蝶がとまる
半ば透明になったまま
光のなかを
幾つかの人影が
交差して消えた

遠くから川の流れる音
ただその音だけが
残る