真昼


やはり
間違いだったのか
まっすぐ立っているはずなのに
傾いている
その方向で
気違い!と叫ぶ声
禿げて太った異形の男が
目を裏返して近づいてくる
殺されるわ、逃げて
もう一度叫ぶ声
確か先刻は
進みすぎた時計を
暗がりで直していたはずなのに
あなたは色とりどりの洗濯物をひろげて座り
少女のように微笑んでいたはずなのに
そうだ
殺されても仕方ない
奪ったのだから
彼の過去も未来も奪ったのだから
立ちすくむわたしを
別の手が引き寄せる
マダココデハ死ネナイ
それなら何処で?
不意に差し込む光
鳩の羽ばたく空虚な青空
傾いたまま横たわったベンチの上
ペンキのはげたベンチの上
傾いた洋品店の
古い看板を見ていた