世界の終わり


深く浅く鼠色の雲
遠く近く打ち寄せる風
ざわめく野の草から
黒々と飛び去る鳥たち
・・・ココニ来テ
・・・いま行く
点滅する踏み切り
旗は黒ずんだ黄色
あなたの服は薔薇色
・・・モウスグスベテガ終ワルノネ
ひるがえる長い髪
・・・ココニ来テ
風が低くうなり声をあげる
・・・いま行く

その石
紫色の
氷のように冷たい石
映っているのは何?
・・・アナタノマナザシ
あなたの方へ、あなたの方へ
血の流れより早くたどり着きたい
廃屋の硝子の砕ける音
破片が草の上に点々と散らばる

遠く近く打ち寄せる風
高く黒く冬の塔
待ち続ける、叫び続ける
あなたの時を
・・・アナタノ飛翔ヲ
赤い老星が滅んでいく時
・・・ココニ来テ
・・・いま行く
暗い野の向こうに海が
海の上に鼠色の雲が
雲の奥には冬の塔が
塔の頂には赤い老星が・・・

遠ざかる風の唸り声、鳥の影
点滅する踏み切り
轟音をあげて通り過ぎる赤錆びた列車
・・・コレガ世界ノ終ワリナノ?
振返る瞳は深い青
そこにわたしたちの出会いと別れがある
神よりも孤独な沈黙がある
あなたは幼女のように空を見上げる

そしてあなたの上へ
・・・アナタノ忘却ノナカヘ
風が沈むように
影が伸びるように
赤い老星が静かに降りてくる




(参照 詩2「軌跡」3「夏の光り」)