夢の中の午前零時


冷たい虹・・・冷たい花・・・冷たい影
低い線上から目を上げ
これは夢だと
浮かび上がる顔たちに叫ぶ
遠く凍てつく大時計
青く光る針が
天を指し示す午前零時
償われた顔も
見捨てられた顔も
沈黙の唇をかすかに動かす

嘲る男を突き飛ばし
誤って死なせてしまったおまえは
薄暗い裏口に佇んだ
灰色の空を見上げながら
不思議に安らいでいるその顔
わたしの流した涙のなかに
枯れ木のような人影が通り過ぎる

・・・これは、夢だ
(オマエハ
待チ続ケテイタハズダ)

冷たい指・・・冷たい血潮・・・冷たい光
肖像画の並ぶ
寂れたスナックの隅で
わたしはまなざしを上げる
他に客のいない午前零時
動く肖像画のように
アイスピックで氷を砕く中年のママ
はじけた氷片が
カウンターをすべり
暗緑色の床に
ゆっくりと落ちていく

・・・わたしにはもう
涙はない
けっしてもう
涙を流すことはないだろう

(オマエハ・・・)