予感


大麻から野幌へ
国道が大きく曲がりながら空に伸びて
郵便局とスタンドの方に
なだらかに降りていく
雨にくろずんだ夕暮れが
手放した一個のオレンジ
鮮やかな果実が
暗い坂を転がっていく
青い傘の下
母と幼いわたしが
その行方を見守る
カーブで縁石にぶつかり
方向を変えるオレンジ
曲がってきた車のタイヤが
果実を押しつぶす
飛散する肉片
それは
1966年の夏?
それとも
1967年の夏?
母は無言で
散らばった果実を見ていた
怖れなのか恍惚なのか
わからない、そのまなざし
けむりながら
近づく夜のなか
けむりながら歌う雨のなかで