永遠の味よりも苦く 打ち寄せる霧雨の海 すでに訪れたものを 消し去ることはできない 波の壁に刻まれた その子の肖像に 顔はない 痕跡に曳かれ 旅を強いられた男は 空洞のなかで 炎熱にふるえる蒼穹を見上げた 回帰を断たれ なお回帰する海に 蒼穹との境を求め 鏡像のように手を握り合う双子 生臭い船着場 古い船に原色で塗られた船名を 男は吐き気のなかで見つめ 過去に降る雨に濡れる あるいは 飛散する波の光に包まれる