葬列


窓のなかに顔が浮かぶ夕暮れ
薄闇の公園通りを火が運ばれていく
古い病院のほうへ
或いはその向こうに流れる青黒い川へ
彼女は行列のなかで不意に立ち止まる
火に照らされた横顔には
一条の傷跡

彼は眠りのなかで
その眠りを確証しようとしていた
火の行列の行方を見定めるように
小さな鍵が路上に落ち
彼女は知らずに歩み過ぎる

黒くなる川の流れ
林のそばのくぼみに川水がたまり
一羽の水鳥がひっそりと浮かぶ姿を
彼は見つめる
それが一枚の写真になり
真昼の光に焼かれる匂いが
記憶の見えない結節からたちのぼる

彼女は
生まれるかもしれない昨日
のように
微光の羊水に包まれ
火は無数のゆらめき
古い病院の庭
コスモスの花の下には
彼の眼球が白く瞬き
老いた守衛が
静かに黒い門を閉ざす