境界


かすれ声が生むその落陽
密生する原始の花々が燃え上がる時
滴りはじめる緑の木々
エメラルドよりも無機的なそれは
目覚めようとする瞳のなかに
石像のような明日を閉じ込める

幼女のように異郷を守り
寄り添う家々のまわりに
星の光がざわめく
開かれた女たちの唇
漆黒の咽喉からふるえだすのは
細い髪
それは群生し
夢の環界を溶かし
夜の虹を織り上げる

償われた祈りの
光る条痕の行方
霧と結ばれた夜明けが
森の奥ににじみ
死んだ僧侶の遺言を抱いて
駆け始める少年
追う女たちのなかには
忘却された母
その色あせた裸体に
最後の虹が燃え尽きる