夜
遠ざかる潮騒のなかに
微粒子のような光
枯れた岩の陰に開く花
蒼褪める空の片隅に
雲が流れ、小さな炎をあげる
それは突然の夕暮れ
記憶の暗礁から
いくつもの鳥影
赤い鳥居を横切り
暗い林へとおちていく
(忘れるために
掘り返した遺骸
その瞳は青)
氷のような余韻から
星たちは四方にまばたき
消えかかる水平線に
うなだれる長い髪
(ただ、今は
くるおしく)
鳥居に吊り下がる裂けた傘
眠る林は海をはらみ
大きく曲がる道の向こう
半ば閉じた瞳が
静かに闇と溶け合う