図書室


古い図書室の
一番奥の席に
彼女が座っている
開かれた窓の外に
揺れ動くポプラの枝
まぶたを閉ざした
彼女の顔には
微笑が浮かんでいる
透き通るような光に
きらめく長い髪
わたしが
まぶたを開きかけると
霧の流れるような音
まぶたを開くと
彼女がいなくなる
窓の外は灰色に暮れて
雨の滴が硝子に浮かぶ
ポプラの薄闇の向こう
石狩川の暗い流れが
けぶる空に途切れている
まぶたを閉じると
彼女は光の中
唇をかすかに動かしながら
まぶたを開きかける
子供を呼ぶ母親の
遠い声
彼女はまぶたを開く
すると
光の輪のようなものが見えて
わたしがいなくなる