水源


静かな夕暮れ
窓の外に戯れる二匹の犬
水田の稲穂が輝き
時々黒い影が見え隠れする
汗の匂いのするベッドで
わたしはだれかの首を絞め続けている
ふと窓に目を向けた後
今度はわたしが首を絞められている
ひそやかな無限の繰り返し
か細い女の歌声が
低く耳の底に流れていた

銀色の雪に包まれ
強い光に目を焼かれ
どうするべきだったのか
先回りして、後ずさりして
あなた以外のひとを遠景に浮かべ・・・

・・・夜明け
まだ青暗さを残しながら
大気の粒子に光が満ちる頃
長い石の壁沿いに歩いていた
雑草の茂る荒れ野の何処かで
あなたを殺してきた
埋めることもせずに
空を向く亡骸を見下ろした

時は過ぎて
誰もあなたを見つけない
殺したのは夢だったのか?
何の確信も持てないわたしに
非通知の伝言が入る
  
(水かさが増して
もう貯水池は持ちこたえられません
あなたの水路に放水しました)

水源だけに雨が降り
激しくうねりながら
ひとすじの水が押し寄せてくる
そんなイマージュに心を奪われ
打たれるように立ち尽くした