夏のオード


ポプラ並木を通りすぎて
ふりかえると風の色が見える
青白い山並みまで続く白い道
そこに彼女は佇んでいた
走っていけるなら
何処までも走っていけばいい
失われたすべてを見出すために
そうして彼女は去り
わたしはここで幾つかの夏を生きた

陽が沈むと
遠い山並みが赤紫に透き通る
白樺の間の墓地は青ざめて
忘却の底からたちのぼる
冷たい息を肌に覚える
過ぎ去ろうとする夏
移る季節の彼方を
まだ彼女はさまよっているのだろうか
灰のようにふりしきる
星たちの声につつまれながら

北極星をめぐる
沈黙の叫び声
微光に沈む
ポプラ並木の黒い影
積雲から来る紫の風にのって
わたしは世界にひろがっていく
ためらいがちにふれる白い息
そのなかに
消えていく夏を見つめながら