もう、あなたは


眠りを奪われた瞳に
星の沈む夜
細く白い道が浮かび
誰かが近づく気配がする

ありふれた痛苦に汚された椅子には
まだ暖かみが残っている

雪玉をころがす少女の指先
暗い空に浮かぶ沈黙の街灯
遠くには何もなくていい
今ここに在り
やがて何処かに在るだろうことの
透明な痛み

ここまで来た・・・
わたしは
椅子の背に手をのせる
言えなかった言葉
言えるはずのなかった言葉を抱いて

・・・もう、あなたは
苦しまなくてもいい