祭りの夜


ひとのざわめき
流れていく灯篭の明り
死んでいったひとだけじゃない
思い出せないほど孤独で
取り戻せないほどに満たされた時間が
この闇のなかに息づいています
すぐそばにいるあなたが
硝子の向こうにいる
幼いわたしと老いたわたしが
あなたと手をつないで歩く姿を
遠くから見ている
けれどそれは
くるおしいほどの幸福
あなたと出会わなければ
失うことすらできない時間