或る朝


ふちの欠けたコーヒーカップが
食卓の上に
カーテンの隙間から差す光

ただ、そこにいる
それだけで償われているような
そんな存在もある
いや、今は
あった、としか言えない

いくつかの記憶で出来た
物語で呼吸するレプリカント
自嘲する前に
すでに光は来ていた

確かな日付も
何年前かすらもわからない
何の意味もないはずの
明るい夏の朝
そう
その或る朝
わたしの知らない孤独を頬に浮かべ
あなたはわたしに別れを告げようと決めた...
そんな気がしてならない

いつの間にか
少しだけ軽くなった世界の
青く燃える丘
眩しげな目をして
(その朝のあなたのように)
わたしは佇む