炎(姉、とも呼ばれた女性に)


揺れ動く・・・すべてが
このまなざしは炎
あなただけを見つめてきた

凍てついた道の終わりに
渦を巻く青い濁流
古い写真の横顔に
夜明けの微光が漂う

青ざめた雲から落ちて来る声
その反響からひろがる地平線
ここまで来た・・・
あなたに告げるために

永すぎた幼年時代は
もう終わらせよう!

燃えあがる・・・すべてが
廃線の向こうに
あの死者の住む村のなかに
あなたの柔らかな乳房が
わたしの隠した伝言が
枯れ木のように炎をあげる

もしも守りたいというのなら
守りえないものを
あなたは抱きしめていたのだ
もしも信じたいというのなら
信じえないものを
わたしは夢見てきたのだ

濁流に沈む
折れた人形の首
村の上に飛散する
沈黙の蒼穹

消えていく・・・すべてが
ちいさな約束も嘘も色あせ
あなたの乳房は
見知らぬ指のなかに息づきはじめる
廃墟に睦みあった幼い肉体は
鳥よりも高く蒼穹にのぼる

 (炎の先端に目覚める崖
 そこから滑り降りる橇に微笑む
 影の子供たち)

わたしはふりかえる
亡骸のように
黒くただれた遠い道を
このまなざしは炎
あなただけを見つめてきた・・・

あなた、という明日を