別れ


夜明けの砂と霧のひろがり
川に沈みながら
わたしは別れを告げる
咲き乱れる花々に、
響きあう風と髪に、
氷雨の降る孤独な眠り、そして
あなたに

あなたはうなだれながら
くるおしく雨の扉を叩きながら
素知らぬふりでわたしを殺した
深夜の橋から
漆黒の川に突き落とした
あなたは残照の美しい空を見上げ
見知らぬ死者に問いかけながら
わたしを忘れてしまう
激しく怒り
不条理を呪いながら
わたしを消し去ってしまう

あなたは知らない
風の吹く午後に
長い階段を転げ落ちながら
わたしがあの女(ひと)と首を絞めあったことを・・・
食卓にくずれる
腐った魚の咽喉から
光に満ちた雲に向かって叫んだことを・・・
あなたは知らない

夜明けの砂と霧のひろがり
川底に沈みながら
わたしは知る
半ば腐り、
瞳は澄んだままで、
わたしの手を導くのは
昔殺したあの女(ひと)だということを