夏の行方
幼い目の灰色の空
赤い鳥居の下には
腕のない女
暗い林が風にざわめき
川の彼方に
失われた夏の海が浮かぶ
民宿の裏の草むらに
色あせている七夕飾り
異形の影を曳く男は
愛されないもののまなざしで
雨を含む空を見上げた
・・・子供の頃
七夕飾りの木を
夜明けの川に流しました・・・
それが彼の記憶だったのか
もう思いだせない
角の欠けた石段に腰掛け
降り始めた雨に瞳を濡らす
細い川沿いの道は
少しずつ草と溶け合い
わたしは
誰かの気配と歩き続ける
海の不在を定められた
夏の行方をたどるように