見知らぬ歌


  草の実の赤
海の金色の光
  眩しく

    そして

むしばまれた星の上に
あなたの眠る白い塔

  黒い枝ごしに
揺られて消えるもの
  ひとつ ひとつ

    いま

蝋燭のように
硝子が明るくなる

          *

暗い扉に深夜の影が浮かび上がる
白い墓 遠く遠く

  (金色の波に小船が揺られ)

壊れた時計が崖にころがる
けだるい夢 深く深く

  (母のように微笑むあなたがいる)

          *

地下からの夜明けの階段
息きらしつつ駆け上る
凍りついた草の影
灰青色の山脈
廃れた小屋の窓から
振り子の音が響き
ふりかえると
丘の樹があてどなく空を見上げる

          *

緑の水に奪われながら、固くなった瞳、空に映えて

塔から響く春の歌声、

黄色い花の野を、子犬が駆け去り、

まだ眠ったままの、古い風を呼び覚ます

          *

かすかに揺れる花々
光の過剰に委ねられ
虫と鳥が大地を埋め尽くす

  (まだ眠りから覚めないうちに
   ひとつの目覚めは太陽の中に輝く)

たとえば夜を呼び起こし
すでに遅い帰郷をかなえようとするなら
白い亀裂が眉の間をはしるだろう

  (波のような大地の白昼に
   むきだしになった塔の階段)

かなえられなかったすべては
水晶の風が奪い去る
傷ついた鳥のふるえる明日のために