その、朝


燃え尽きた花火が散らばる
その、朝
人生のはじまりに佇むかのように
彼女は輝く空を見上げる

記憶の何処を探しても見つからない
その、朝
誰も通らない陸橋の上から
わたしは彼女を見下ろした

多くの喜びと悲しみが
傷口のように疼く
彼女の希望と
わたしの悔恨が
一瞬だけ結びあった
その、朝

わたしは大きく手をふる
希望と不安に揺れる・・・そう、
まだ少女の彼女も
手をふり返す

逆光の影でしかないわたしは
出会わなくてもすむような
別の明日を祈りながら
光のなかに消えていった