終末


終わりなく打ち寄せる光の波
宙に燃え上がる風の指先
季節を貫く大河に流されながら
生まれようとする目が
水晶のようにきらめく

氷の球体の中心から外部へ
外部から中心へ
鳴り止まない星辰のざわめき
病院の長い廊下で
男がぼんやりと振り返る

昼夜を知らずに
増殖する白い空間
彼女は
ベッドの上で静かに目を閉じる
目をそむけた彼の視線の先に
顔のない子供の肖像画
沈黙が叫び声をあげる瞬間
炎のゆらめきのなか
彼女はしなやかに宙を掴んだ

「まだ彼が幼い頃だった
黄ばんだ光のさす暗い病室で
髪の長い女が子供を産んだ
父となった貧しい男が
死んだような黒い屋根の列を見つめて
涙を頬に伝わらせた」

大河の氾濫
都市が音もなく水没していく
山腹の病院を囲む無数の瓦礫
そのなかに輝くひとつの鏡
彼は見る
鏡の照り返す光の波のなかに
ゆっくりと昇る見知らぬ太陽を

ワタシタチハ待ッテイタ
無限ノ廊下ノナカ
タダヒトツノ扉ノ前
何カヲ待ツコトガ不可能ナ時間・・・

彼はふるえて立ち止まる
そしてツェノンの矢のように振り返る
ひとつの気配が近づいてくる
白い壁、白い廊下のなかを
静かに髪をなびかせながら

「その時、彼は・・・」