白い声


氷に閉ざされている運転席
確実なものを
何一つ見分けられない
それでも走りはじめる
ここが砂漠であることが幸運なのか
それとも崖に行き着くことが幸運なのか
眩暈は肉体を持ち
助手席に座る
かすかな香水の香り

死という境界ですら
定かではなくなった
遠く、或いは近くに
何かが燃えている
白い炎
無数の水晶の噴出
わたしは彼女の手を握る
有り得ないはずなのに
その指は脈打っている
血はわたしに流れ込み
透明化していた心臓を
収縮させる

不意にすべてを包む
目を眩ませる光輝
幾つかの物語が
背後に織り上げられる
しかしその何処にも
わたしの破片すらない
わたしは炭化した亡骸だ、と
彼女に告げる
いいえ、
あなたは無限よ
その声は
金属のようにあざやかに
光のなかに鳴り響いた