特急オホーツク


ためらい傷のある
細く白い手首だけが
虚空に浮かんでいた

空気が少しも動かない
凍てついた夕暮れから
ただ、
遠ざかるために
剃刀を手にしたんだね

雪の丘で
彼女は大きく手をふる
わたしは列車の曇る窓から
揺れながら凍りついたままの
白い手首だけを見ていた