ふるえる闇


水晶の川は灰色
朽ち果てた塔の窓から
ひとりの少年がわたしを見つめる
黒く縮れた雲の隙間に
不幸な小犬は永遠に漂い
森の向こう
褐色の街が眠りつづける

草の枯れはじめた公園
子供たちが踊っている
遠くから風が舞い降り
踊りを黄昏に染めあげる

わたしは部屋の小さなランプを灯す
まわりに輪をつくる闇
外に冷たい風が吹き荒れ
黒い街路樹がざあざあ鳴っている

夢のなかの白い雪
誰かの眠る繭が埋もれ
無限の夜が裾をひろげる
  ・・・おねむりなさい
  ふるえる闇に包まれて
  水晶の振り子は川の底
  降り頻る雪のなかを
  黒い行列が続いていくわ・・・

何もかも灰緑色の霧のなか
わたしは古い石畳に佇んで
川に映る森を見つめる
枝のひとつひとつに結晶する
果たしえない約束の時
彼方に続く黒い道の
孤独なまなざしの上に
遠くから
雪の予感が鳴り響く