夜(二編)





増殖する緑の液体が
部屋の壁に這い上る
電話が鳴り響き
妹の死が知らされる

部屋の隅で
顔のある植物が窓を見つめる
何処までも暗い空
密やかに進む喪の儀式

深夜
疲れ果てた家族が
部屋に帰ってくる

自分が死んだことも知らずに
妹は静かに微笑む
植物は苦しみを頬に浮かべながら
いつまでも夜の窓を見つめていた



緑の群像


微光に包まれた境界に
その道は消え去る
その道は失われる
夜を繁殖し続けた緑が
幾つかの顔を織り上げたことも
やがて忘れ去られるだろう
これを朝だと告げるためには
針の声がすでに
光の萌芽を貫いていた
祭りの後の荒れた道は
まだ夜を分泌する裏通りへ
ゆるやかな曲線を描いていた
最後の言葉は
腐敗した妹の陰部のために
織り上げられた
死の網目の向こうから
不意に曲がってくる声
鏡の破片
ざわめく緑を半身に透かしながら
わたしの足跡は微光に途切れる