海に続く道


これは忘却の旅
ふるえる唇の色が
静かに色あせるまでの

海に続く
谷沿いの小道
海に流れ込む
鉛色の川
闇のような木陰に
濡れている髪は
仄かに香りながら
呼びかける

古い写真が燃え上がる
永遠に若いあなたの笑顔も
胸に抱かれた
幼いわたしの泣き顔も

マッチを擦るたびに
幸福に包まれた少女は
天に召されていった
消えかかる炎に
過去を投げ入れるわたしは
灰色の雨に濡れ続ける

これは忘却の旅
過去の彼方から
打ち寄せ続ける
青い波

オカアサン!ワタシヲツレテイッテクダサイ。
オカアサンハ、マッチガ消エテシマッタラ、
マタ遠ク離レテイクノデショウ?

古い写真が燃え尽きて
ちいさな灰の山が
雨に黒ずんでいく
それでも
わたしは待っていた

見えない波にさらわれて
恍惚とした顔が空にのぼる
青白い夜明けを