宗谷・サロベツへ


何もないのね、と彼女は呟く
何もないからここに来たんだ

海と道路
草のまばらな野原と低い丘
蒼穹には掃かれたような雲

わたしたちの孤独の容器から
溢れ出すような空虚のなかで
ただ車を走らせ続けた

偶然ついた嘘を宝石のように抱き
透過する風の声に気付かないでいる
そんなわたしたちの生のかたちは
すでに終わっていたのかもしれない

何もないのね、
口実も終わりも...

わたしたちは
空虚に残された邪魔な傷痕のように
互いを見つめ
目をそらした