クリスマス


暗い空の下を母子が歩いている
若い母親と幼女
その少し後ろを男の子が歩いている
それがわたしだ

列車がゴトゴトと通り過ぎていった
母の黒い手提げには編みかけのセーター
青い服の妹が何か喋っている
わたしは後ろを歩いていった

クリスマスが近づいていた
明日を約束する華やかな音楽のなかに
わたしは古い家の玄関を覗いた
若い女がひっそりと空を見上げている

何かが欠けているということが
クリスマスをいっそう美しくする
古びた窓ガラスのなかで
子供たちがその日を待ち焦がれている

わたしは黙って歩いていった
いつの間にか雪が降りはじめていた
母と妹の姿が
線路の向こうに見えなくなった
叫ぼうとしたのに
声が出なかった